1.話題が提供できれば、売れるという法則
話題を提供することと、売れる因果関係は一体どこにあるのか?
そのヒントはお笑い芸人にあります。お笑い芸人の登竜門、それはコンビでもピンでも、まずは何らかの賞を取ることで、メジャーデビューを果たしますが、その後売れるかどうかは、漫才やコントの良し悪しではないそうです。彼らは受賞後、バラエティー番組にひっぱりだこになりますが、その時に場の空気を読み、的確且つウイットに富んだコメントが発信できるかどうかが問われるそうです。つまり、芸能界で長く生きて行くためには、話題提供は必須な資質なのですね。
その最たる例が、長寿番組として今も高い視聴率を保っている番組、「笑っていいとも」「さんまのまんま」「徹子の部屋」です。皆さんもよくご存じですね。タモリ氏、明石家さんま氏、黒柳徹子氏に共通する資質は、話ベタなタレントや歌手、俳優が出演しても、常に話題を投げ掛け、話を引き出し、視聴者をうならせてしまうことです。まさに会話のプロですね。
私はサラリーマン時代の営業部長の頃、かつて売れない部下を何人も持っていました。商品説明が上手くなっても、中々売れるようにはなりません。いったい何が原因なのかと頭を悩ませましたが、ある日、話題提供力の欠如ではないかという結論に達しました。その後は意図的に取引先との接待の場を数多く設け、「話題を提供して、楽しい雰囲気を作って見ろ」と、チャレンジさせました。部下は、最初は白ける場面が多かったのですが、自分自身を売り込もうと必死にネタを振りまいたものです。その甲斐あってか、次第にツボを押さえられるようになり、取引先との関係を深めることに成功したのでした。
営業は素晴らしい商品説明が出来ることが優秀な営業マンではないのです。商品を離れても、常に話題を発信する仕切り屋でなくてはなりません。話題発信力が出てくれば、あなたは必ず売れる営業マンへと変貌出来ます。
では、どのようにしたら話題が提供できるようになるのでしょうか?
営業セミナーで話題提供講座を展開すると、何人かの人から「振るネタがありません」と悲しい(笑)コメントが返って来ることがあります。かくいう私もかつては話題を投げかけることが苦手でした。ところがある先輩の姿を見てこれではいけない、もっとこちらから働きかけなきゃダメだと努力を開始しました。その努力とは、話題のネタを手帳に書くことでした。
25年も続いている「ごきげんよ」という小堺一機が司会する番組もご存知ですね。毎回3名のゲストが、「悲しかった話」「驚いた話」「ハッとした話」など、サイコロに書かれた話をします。実はこれこそ、営業マンにとって必要な、話題提供の訓練素材といっても良いでしょう。私はこの番組をヒントにコツを身につけました。
では私が実際にセミナーで行なっている話題提供のトレーニング例をご紹介しましょう。まずは話題になりそうなタイトルを10個書いてもらいます。①悲しかった話 ②驚いた話 ③苦しかった話 ④楽しかった話 ⑤感動した話 ⑥変わった友人のこと ⑦家族の面白いエピソード ⑧聞いた政治の裏話 ⑨日本経済のこぼれ話 ⑩スポーツ界の珍話題等々、それぞれの項目で3-4行のミニエピソードを綴って貰います。これが話題のネタを溜め込む訓練なのです。
こうしてストックされた話を、お客様との会話の中に盛り込みます。ネタを発信することで、不思議なほど、お客様との距離が縮まり、円滑な商談が展開されて行きます。
営業マンはお客様を楽しませるプロでなければならないというのが私の持論です。商品や業界のウンチクはもちろんですが、仕事以外のネタで話題提供を繰り返して行けば、楽しい営業が生み出され、たとえ今は売れていなくとも、売上は自然と後からついて来ます。是非、実践してみてください。
2.「会社対会社のつきあいから逸脱すれば、売れるようなる法則」
次は、会社対会社のつきあいから逸脱すれば、必ず売れるようになるということです。「ちょっと待ってください。そんなことしたら・・・」と反論するようでは、あなたはいつまでたっても売れるようにはなりません。
営業マンは会社という看板を掲げ、自社商品の普及に努めます。通販でない限り、どんなに優れた商品であっても、一人歩きしないからこそ、そこには必ず営業マンが介在するわけです。そして営業マンの力量が試され、また営業マンの手腕の発揮の場ともなります。
真面目一本やりに商品説明に終始することは一見正しいように見えますが、これ程つまらない営業活動はありません。商品に血を通わせる。血とはあなたの個性であり、お客様の意志や思考を通わせることです。「何かよくわからない」と思う方のためにさらに突っ込んで説明しましょう。
公務員を例に挙げます。役所では、市民から質問を受けたことに対して忠実に説明をする慣習があります。そこには個人的感情や考え方は介在しません。それはなぜなのか? 売り買いが発生しないからです。お役所仕事は居住者の権利に対して遂行される義務ですが、民間企業は違いますね。1つの商品には必ずコンペスター=競争相手が存在し、競争の原理によって売買がなされます。企業は他社よりもっと良い物を、価格やパッケージ、機能、利便性を付加し、差別化を図ります。こうした要素に、実は営業マンという人間も入っているのです。お客様はあなたという一つの差別化された商品を通して、物を買ってくれることを忘れてはいけません。ですから、会社対会社の関係から個人対個人の関係に持ち込むことが必要となるわけです。
価格も高い、機能もそれほど良くない。しかし売れているケースがあります。要は営業マンの個性が他社より数段優っている場合に、売れる現象が生じます。
以前、保険会社の営業セミナーを行なった際に感じたことがありました。保険という商品ほど、素人から見て差別化しにくいものはありません。国内には何十社もの保険会社が存在し、商品は数百種類もあるでしょうか。保険のプロ曰く「正直言って、どこの保険会社の商品も似たり寄ったりです」と。でも突出して売れている会社があります。それは営業マンの資質が高いからで、商品力を超えた人間力が顧客に満足という副次的効果を与えているのですね。
会社対会社の逸脱法は前号でもご紹介しました「お客様の人となりや関心がありそうな話題、趣味を聞き出すこと」は、おわかりでしょうか。関心がある事柄は積極的にしゃべってくれます。聞き手であるあなたは知らない世界を聞くわけですから興味が湧き、突っ込んだ話が展開出来ます(カンパニータンク誌より抜粋)